ナスPの日記

日常生活で自分が何かを「思った」時に、「なぜそう思ったんだろう?」ということをめっちゃ考えて書きます。

わかりにくい事実よりわかりやすい理屈を信じる

先輩、今日はお昼ごはん一緒に食べに行きませんか〜。

ははぁ、体はもう大丈夫なのかって?
あ〜、この間の飲み会で、救急車呼ばれて運ばれましたからねえ、私。
ふふーん。

大丈夫ですよ〜、その説はご心配おかけしてすみませんでした。
お酒も少しは控えるようにしないといけないですねぇ。

今日のランチはちょっとその件でお話したくって。
ちょっと重たい話になっちゃうかもしれないんですけど、いいですか?

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私が救急車呼ばれたキッカケってどんなだったか、知ってます?

そうなんです、私が過呼吸になっちゃって、それを見た○子さんの旦那さんが、びっくりして救急車呼んでくれたんですよね。
後日、いろんな人から「お酒控えなよ〜。」って言われまくって大変でした。
旦那さんからは、「ことを大きくしちゃってごめんね。」って謝ってもらっちゃって恐縮でしたし・・・。

で、ですね、先輩には、
「人って、わかりにくい真実を信じてくれないよね。」
ってことを愚痴りたくって。

ねぇ、先輩、確かに私はお酒が好きで、飲み会も自分主催でたくさん開きますし、その中で実際に何度か終電逃してオールしちゃったりしたことあります。

でもですねぇ、私、一度も意識を無くすレベルまで飲んだこと無いんです。
毎回、自分の面倒は最後まで見てますし、終電を逃した時だって、ちゃんとタクシーで自宅まで帰って、運転手さんにきちんと料金を払ってます。
うちの会社の人の中には、意識を無くすまでお酒を飲んで後輩に送ってもらった上に、翌日会社休んじゃったりする人がいますけど、私は飲み会を理由に遅刻したことなんか一度も無いんです。

だから、あの時も、正体無くすまで飲んでなんかいなかったんです。
原因は、「過呼吸」なんですよ。

過呼吸になったのは、飲み過ぎが原因じゃないかって?
それも周りの人に言われました。
「飲み過ぎが原因じゃないって主張したいのはわかるけど、結局飲み過ぎが原因で過呼吸になったんじゃないの? 周囲の人間からすれば結局同じだから。」
って。
まぁ、確かに、急性アルコール中毒の症状の中に、「過呼吸」って含まれてますからね。

でも違うんです。
少なくとも、その時私が過呼吸になった原因は飲み過ぎじゃないんです。

じゃあなんでなの、って話をしていいです?
今までこの話を聞かせた人は、大概、「まぁでも飲み過ぎでしょ。」とだけ言って話を終わらせる人が大半でしたから・・・。
まぁ、職場ですしね。
同僚が「飲み過ぎて救急車呼ばれた話。」の詳細に興味ある人はいませんね。
先輩もどうせ興味ないでしょうけど、話を遮らずに最後まで喋らせてくれるので。

あのですね、私、あの時、■■さんといたんです。
で、■■さんに、ずーっと、暴言吐かれてたんです。
それで泣き出して過呼吸になったんです。
私、昔から泣き過ぎると過呼吸になる質なもので。

まぁ、私も酔っ払ってたのであまり覚えてませんけど、
「お前は男を何だと思ってる。」
的なことを言われた気がします。
まぁ私が言うのも何ですけど、向こうも酔っ払って支離滅裂でしたね。
汚い言葉で罵倒されたなって印象だけが記憶に残ってるんです。

なので、隣に居た■■さんの奥さんは後日謝ってくれました。
「うちの旦那のせいですみません。」って。

まぁ、なので真相を理解してくれているのは、奥さん、あと昨日この話を愚痴った後輩だけです。
後輩からは「なんで暴言吐かれてるのにずーっとニコニコして座ってるんだろって思って見てました。」って言われちゃいました。
そのとおりですよね〜。少しは自分で自分の身を守れないとですよね。

ま、真相は今言ったとおりなんですけど、先輩に愚痴りたいのはこっから先なんです。
私、この話を今まで何人かにしたんです。
もちろん、こんなに懇切丁寧にじゃなくて、さらっとなんですけど。

でも、それを聞いた人は、よくわかんなかったな、みたいな顔するし、後日一緒にお酒を飲むと、
「この間飲み過ぎで運ばれたばかりなんだから、気をつけなね。」
って言うんです。結局ね。

ははーん、ってかんじじゃないですか。
どうしてなんでしょうね。
まぁ、確かに、わかりにくい真実よりも、わかりやすい理屈の方が覚えやすいですもんね、何事も。
「自分の同僚が、酔っ払って暴言を吐いて相手を救急車送りにした。」っていう事実はそれほど受け入れがたいものなんでしょうね。
それよりは、「お酒好きの同僚が、ちょっと飲み過ぎて失敗して救急車呼ばれた。」っていう理屈のほうがわかりやすいんでしょうね。

せっかくの楽しい飲みの席で暴言吐かれて泣かされた上に救急車呼ばれたっていう事実もなかなか堪えるんですけど、私にとってはこっちのほうが堪えるんですよね。
私にとっての「私が過呼吸になるレベルの暴言を受けた」っていう事実は、みんなにとって「あの人は意識無くすまで飲んで救急車に運ばれるだらしのない人」っていう理屈に変換して覚えられちゃって、私にはそれを訂正するすべがないんです。

正面切って説明してダメなら、何言ってもダメですよね。
それに私も、「職場の人に暴言吐かれて何もできず、過呼吸になるまで追い詰められた」なんて話を何度もしたくないですし。
自分の弱さを露呈するようなもんですからね。
あ〜、先輩に言うのは良いんです。どうせ何言っても適当に聞き流してくれると思うから喋ってるんです。どうせ今の話も半分聞いてないでしょ?


ま、とにかく私は、この出来事から教訓をいくつか学んで、それ以外のことは勉強代だと思って我慢するしか無いんです。
■■さんのいる飲み会には今後行かないようにする、とか、暴言を吐かれた時にはその場でじっとせずにその場を離れるようにする、とかね。
そうしないとまた痛い目に合うぞ、という教訓なんです。

でも、これは何なんでしょうね。この、「事実と異なる認識が私についてまわる」っていうのは?
私はそこまで悪いことなんかしたのかなぁ。
楽しくお酒飲んでる時に「また救急車呼ばれるよ。」とか言われるんですよ。私はそのたびに「本当は違うのに。」って思って、そのたびに暴言吐かれたことを思い出さないといけない。
っていうのはなんの罰ゲームなんですかね。
私がここから得るべき教訓は一体何なんでしょうね。

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あ〜、今週の金曜日はうちのチームの飲み会ですね。
こないだの飲み会と違って、仲間内で気を使わずに飲めそうなんで楽しみです。
まぁでも、きっと「飲み過ぎないように気をつけなよ〜。」って言われちゃうんでしょうね。今後ずっと。
その時先輩はこの話覚えてますかね。どうかな。

 

 

 

 

 

 

異星人同士の楽しみな会話

毎週、木曜日と金曜日には、職場の先輩と昼食を共にしている。

その職場の先輩というのはたいそう無口な人で、こういった昼食の場で自分から口を開くことは絶対にない。

職場で流行ったハーマンモデルテストをその先輩がやったところ、論理度100、友好度5という結果が出たので、つまりは非常に高度な論理性を持ち合わせる代わりに社交性を捨てた人なのだ。

そんなわけなので、昼食の時は大概私がほぼ一方的に話しかけ、先輩が薄い反応を返す。

この間の会話はこんな感じだった。

「この間、フーターズっていうとこにご飯食べに行ったじゃないですか。
あの店のお姉さん達、めっちゃ露出度高かったですねぇ。」

先輩は、聞いてはいるよ、という風に目線をこちらに向ける。

「写真撮ったりしてる人もいたし、私も注文待ってる間、つい目で追っちゃいましたよ。でも先輩はそんなことしてなかったですねぇ。
紳士なんですねぇ。」
「先輩はこうしてご飯一緒してる時も、スマホ弄ったりしないですし、そこもジェントルマンですねぇ。」
「私は、誰かと一緒にいる時にスマホ弄らないのは礼儀だと思ってそうしてるんですけど、でも別にそういうのって人に押し付けたりできるものじゃないじゃないですか。だから目の前でスマホ弄るのやめてって言うのもどうかと思って。」
「先輩はなんでスマホ弄らないんですか? やっぱりマナーとか気にしてるんですか?」

そこで、やっと私は話すのをやめてじっと先輩を見る。

先輩は私の質問を少し吟味する様子を見せた。

うん、あんまり人前でスマホ弄ったりはしないかな。
自分がスマホ弄ってるところを人に見られたくないんだよね。

「ほほぅ。」
と私はうなづいた。
そんな答えは予想もしなかった。
世の中にはこんな風に、他人に自分のことを細々と見せたりしたくない人間がいるのか、と。

そういえば先輩は写真も撮らせてくれない。

私はといえば、職場の人に好きなだけ写真や動画で撮影してもらっているというのに。
なんなら撮影してくださいとお願いしたいくらいなのに。

そこで会話は終わり、我々は黙々と食事を口に運ぶ。


先輩は確かに自分から口を開かないが、私は先輩と毎週ランチに行くのが苦でないどころか楽しみにしている。

毎日自分に呪いをかけている

余裕を持って出社できた時は化粧をするが、遅刻ギリギリの場合は化粧をしない。
そもそも30才を過ぎるまで、全く化粧の習慣がなかった。

それなのに、今ではほぼ毎日のように化粧をしている。

毎日化粧をするようになったキッカケは些細なことだ。
たまのデートの時など、慣れない化粧をした私に向かって、パートナーが
「顔が白くて違和感がある」
と言ったのだった。

「違和感を感じるのは、君が私の化粧した顔を見慣れてないからだ。
見慣れればこの顔もそれなりに綺麗にみえるはずである。」
と、私は返した。

と、いうわけで、パートナーに慣れさせるために、仕事に行くときは毎日化粧をするようにしたのだった。

化粧が習慣づいてから半年後、パートナーに、
「どう?」
と確認した。

「うーん、確かに見慣れてきた気がする。
でも、もう止めてもいいんじゃないかな。毎日人工物を皮膚に塗るのは、なんだか良くない気がする。」

なるほど、納得いただけたのなら、もう化粧をする理由もない。

そう思ったものの、なんとなく化粧の習慣は続いていたが、ある時、あまりにも出社がギリギリで、化粧できない日が何日か続いた。

その間、職場でトイレに行く度に、私の目は、私の顔の一部に吸い寄せられた。
鼻の下にできたニキビだ。おや、私の歳ならこれは吹き出物というんだっけかな。

ファンデーションで塗り潰していた時には気にならなかった小さな吹き出物が、化粧をしないときにはこんなにも目立つものか、と思った。

この小さな違和感は、私だけが気づくものだと思う。
周りの人間は、そこまで他人の顔などまじまじと見ない。

化粧してないときには
「へー、化粧してるんだと思ってた。」
といい、してるときには、
「化粧してるの? へー、気づかなかった。」
ってなものだ。


この吹き出物やムラのある肌色なんて、誰も気づいてない。

そう自分に言い聞かせながらも、違和感がどうにも抜けず、私はまた、化粧をする生活に後戻りすることになった。


今までだったら、
「化粧をしてなくても、まぁそれなり」
「化粧をすれば綺麗になる」
という感覚だったのが、
「化粧をすれば、まぁそれなり」
「化粧をしないと粗が気になる」
という感覚に、いつの間にかなってしまった。

なんとも残念な話だ。
試しに毎日化粧してみよう、なんて思わなきゃよかった。

素のままの自分の顔に違和感を感じてしまうなんて、まるで呪いをかけているようなものじゃないか。

うんざりするほど繰り返される質問

早口で、
「子供欲しいとは思ってたんだけどねー!気づいたらこんな歳になってて!」
って言ったあの人。

「子供いるんですか?」
なんて質問しなけりゃよかった。

きっとこの人は、今まで嫌というほど同じ質問をされてきたに違いない。

ドリップコーヒーとubuntuと

 

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1月に会社の同僚と旅行に行った時、宿の土産でサザコーヒーをもらってきたので、この1ヶ月の間、休日の朝食ではドリップでコーヒーを入れるのが習慣になっていた。

ご存知のように、ドリップコーヒーは入れるのに時間と手間がちょっとだけ必要だ。
コーヒーフィルターをドリッパーにセットする。
コーヒーの粉を2さじ強入れる。
お湯を、最初は全体の粉を蒸らすように入れる。
2回目以降は、まぁ、適当に入れる。
水滴がポタポタと垂れるのを眺める。


このひと手間を味わうのが贅沢・・・と、ドリップコーヒー愛好家は言うのかもしれない。
けど、すでにソーセージも目玉焼きも主食のパンもとうに準備万端である。早くコーヒーが入ってくれないと冷めちゃうじゃないか。インスタントコーヒーってのがあってよかったよね、世の中。
と、思いながら、ジリジリとコーヒーが入るのを待つ。

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以下、パートナーと私の会話。

私「しっかし、このドリッパーってのを考えた人はすごいよね。」

パ「あぁ、クリタ夫人のこと?」

私「誰?」

パ「コーヒーの有名なメーカーでクリタってあるじゃん。
  あれ、カリタだったかな?
  ドリッパーの紙とかすごい試行錯誤したらしいよ。ドリッパーのこの穴の形がミソらしい。」

私「ふーん。ドリッパーができる前はどうしてたん。」

パ「布で漉してた。」

私「ふーん。それで味は悪くなかったわけ?」

パ「味は悪くなかったけど、布は使った後洗わなきゃいけないからすごく面倒だった。
  目にコーヒーの粉が詰まったりするんだよね。」

私「へー、物知りやん。なんでそんなこと知ってるん。」

パ「新谷かおるの漫画で読んだ(笑」

私「そうなんだ(笑。いや〜、物知りな人と会話してると楽しいなぁ。
  今の話ブログに載せていい?」

パ「いいけど、あ、やっぱりクリタじゃなくてカリタだった気がする。ちゃんと調べた方がいいよ。」

 →カリタでした。

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私「あ〜、やっぱりサザコーヒーは美味しいなぁ。
  って毎回言ってるけどさ、私。
  これは本当に美味しいのかな。
  自分でひと手間かけてるから美味しいと感じてるだけなのかな。
  飲み比べしてるわけじゃないからわかんないや。」

パ「じゃあ飲み比べしてみますか。半年以上前にスーパーで買った別のドリップコーヒーと。」

私「おっ、いいんですか? ありがとー!
  この話ブログに書いていい?」

パ「いいよ。」

早速パソコンを立ち上げて書き始める。

私「そういえばこのマシンにはubuntuが入ってるじゃん。
  会社のマシンにもubuntu入れようとして、いちおう、ubuntuでいいのかなって思って、centOSとの比較で調べてみたんだけど、ubuntuって結構windowsよりに作られてるらしいね。
  それでさ、最近、会社でMacいじる機会があったんだけどさ〜、ubuntuと同じLinux系だと思ってたら痛い目見るね。Macの操作方法全然違うじゃん。フォルダの開き方とかメニューバーの出方とか。
  Macだとfinderっていうんだっけ?
 あと、Macだと、メニューバーがツールの上じゃなくて、画面の右上側に出るじゃん。」

パ「あ〜、まぁね。でもubuntuも2011年版くらいまではMacっぽかったんだよ。
  ただ、ノートパソコンで使うとなると、メニューバーがちょっと大きく広がっちゃってるんで、画面が狭く感じて使いづらいってんで、windowsっぽく直したらしいよ。」

私「へ〜。」

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パ「コーヒー入ったよ。」

私「おっ、ありがと。」

パ「うーん、やっぱり、サザコーヒーの方が美味いな。」

私「そう? こっちーのスーパーで買った方は○○さん(パートナーの名前)好みの味っぽいね。多少酸っぱい。」

パ「うん。これでもマイルドブレンドのやつだけどね。
  もっと酸っぱいやつで、モカもあるけど、そっちはナスPは好きじゃないでしょ。」

私「うん、私は苦い方が好き。
  ・・・こっち(スーパーで買った方)はやっぱり薄い気がする。粗挽きなのかな。
  あれ? 粗挽きのほうが味が薄くなるで合ってるんだっけ?」

パ「合ってる。」

 

私「細かい挽きだとどうなるんだっけ?」

パ「細かい挽きだと、味は出るけど香りが出ない。だから、味も香りも出したければ、粗びきで多めに挽く。」

私「あ〜そうそう、そんなことを夜行さんが言ってた(笑。
  私のコーヒーの知識は嘘喰いの夜行さんからなんだけど、○○さんは?」

パ「俺も夜行さんからだよ(笑。
  そういえば、サザコーヒーは自分で挽いたって言ってたけど、粗挽きかどうかの調節はしたの?」

私「してないよ。宿の設定のままで挽いた。だって素人やもん。どうしたら調節できるのかもわかんなかった。」

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パ「こっち(スーパーで買った方)、やっぱり薄いな。」

私「お湯入れすぎた? あんなに粉いっぱい入れたのにね。
 袋に、粉何杯に水何mlとか、指定の分量書いてあるんじゃないの?」

パ「書いてあるだろうけど、読んでない。」

私「読みなよ(笑。私、インスタントコーヒーの分量も適当に入れてたけど、分量通りに入れたらやっぱりそれなりの味になったよ。スプーン2杯に、150mlっての。
 ちなみに、うちにちっさいスプーンて2種類有るんだけど、ティースプーンとデザート食べる用のスプーンが。間違ってデザートスプーンで計って入れたら流石に苦かったね。ティースプーンの方が正解やね。」

パ「スプーンってそっちの方か(笑 てっきり普通のサイズのスプーンと間違えたのかと。」

私「流石にそれは間違えない(笑 大きすぎ。」

パ「スプーンといえばさ、俺の親父の子供の頃の話なんだけど、学校給食でカレーが出るから、スプーン持って来いって言われたらしくて。で、スプーン必要なんだけどって家でばあちゃんに言ったら、これしかないって言われてデザート食うような小さいスプーン渡されたらしい。 ”一応食えたけどさ”って言ってた(笑」


私「(笑 そんな話が。いいねぇ、うちの親からそんな子供の頃のエピソードなんて聞いたことないよ。」
 

 

 

 

私の平穏な世界

朝出社する。

同僚や上司に挨拶する。
基本的に無視されるということはない。

仕事をする。
分からない点について、プロジェクトを管理してる先輩にいくつか質問する。
質問の要領が悪いのか、先輩に、
「ちょっと、話がよく分からないけど…。」
と言われる。
「すみません、持ち帰って整理します。」
と伝えて自席に戻る。

質問を自分なりに整理すると、質問するまでもなく答えを思い付く。

「すみません、先輩! さっきの質問なんですけど、かくかくしかじかで、わかりました!」
と、先輩に伝える。

先輩は
「そう。」
とだけ言って少し笑う。

私は先輩から反応があったことに満足する。

質問したことが解決したのを報告するのは、ちょっとした礼儀であると考えている。
けど、それとは別に、自分のことを他人に聞いてもらい、「聞いたよ」という反応をもらうと、なんとなく心が安らぐ気がしてくる。

昼になると、自席で弁当を食べたり、先輩と食べに行ったりする。
今日は自席で食べる日だ。
そんな時には、通りすがりの同僚が、「今日もそれ食べてるの? 好きだねぇ。」と話しかけてきたり、隣の上司が世間話をしてくる。
最近だと、
「今週は東京ゲームショウだね。」
ってなこととか。

昼の時間を、そんな世間話をして、それなりに楽しく過ごす。

定時になると、支度をしながら隣の上司とあれこれ世間話をするのが常だが、今日は、
「期限の近い仕事があるが、出勤日を増やすべきだろうか?」
という相談をした。

私は週に3日しか働いていないので、仕事が立て込んだ時には出勤日を増やすことがあるのだ。

上司の答えは以下のようなものだった。
「現時点で進捗は遅れてないし、いざとなったら君の先輩が仕事を吸収してくれるので大丈夫です。そのようにスケジュールの設定をしてあります。」

私は「承知しました。」と言って、遠慮なく定時で帰る。

先輩は私の二つ上で、上司は3つ上なので、話しやすい。
先輩とは週に二回昼御飯を一緒に食べに行くし、上司は数ヵ月に一度グループで日帰り旅行に連れていってくれる。

そして、二人ともとても礼儀正しく、何より周りをよく見て、人の話を黙ってじっと聞き、必要に応じてフィードバックしてくれる。
なので、私は毎日、精神的なケアを受けているような気になってくる。

そんな平穏な日常を過ごしている。
とっても幸せだ。


とっても幸せなんだけど、時々、その幸せがいつ失われるのだろう、と怖くなる。

いつかこの職場を離れる時のことを想像する。

外の世界は、おそらくこんなに平穏ではない。

口を開けて、飴が落ちてくるのを待ってる

最近、高校の頃の知り合いを遊びに誘わなくなった。

数年前までは、最低でも一年に一度、多ければ数ヶ月に一度は誘っていたのに。

皆を誘わなくなる前に、私は一人のメンバーをLINEのグループから外した。そのLINEのグループ上で、高らかに、そいつを糾弾した後に。

だから、他の知り合いは、私が皆を誘わなくなった理由を、そいつがやらかした事のせいだと思っているようだ。

でも実は違う。
知り合いを誘わなくなった理由は、そのグループ内にあるわけじゃない。
第一、そいつをLINEから外した後も、何度か遊びに誘ったことはあるし。

皆を遊びに誘わなくなり始めたちょうどその頃に何が始まったかというと、会社の同僚が頻繁に日帰り旅行に誘ってくれるようになったのだ。
前々から開催されていたグループ旅行に、途中から参加させてもらうようになった。


数ヶ月に一度の頻度で、新幹線に乗って観光地に出かけ、温泉に入って帰ってくる。
時には泊まりもある。

その旅行は、新幹線の切符の手配から現地における観光名所の取捨選択まで、一括でその同僚が行う。

旅行が終わる度に、同僚は「次は○月頃の開催となります。次の参加もお待ちしております。」
と締めくくる。

私達は、また次の旅行を楽しみに、日々の仕事に戻っていく。

旅行に行った直後は、
「しばらくはお出かけとかもういいかなぁ。」
と思うし、次の旅行が近くなると、
「次の旅行があるし、他のお出掛けとかは別にいいかなぁ。」
と思う。

旅行の頻度がもう少し低ければ、
「その間に他の人とお出掛けしようかな。」
とも思うかもしれないけれど、
同僚からのお誘いの頻度と、私がお出掛けしたくなる頻度がちょうどよい案配なので、私の旅行欲は、自分で頑張って満たしてやる必要がない。


5人とか6人からなるグループを引き連れて旅行したことのある人なら分かると思うけれど、あれは結構な手間がかかる。
昼御飯を食べる場所を確保したり、一人だけ遅れてくる人がいた場合にどう対処するか決めなくてはならない。
(寝坊で一時間遅れてくるやつの為に、他のメンバーをただ待機させるなんて、最もやりたくないことだ。)

旅行というのは、まぁそれなりに楽しいものではあるけれど、同時に手間がかかるものでもある。
それでも、自分を楽しませたいと思うなら、その手間をかけてでも実行する価値は、当然ある。
何より、自分を楽しませてやれるのはこの自分しかいないんだから、やるしかない。

って、前は思ってた。

なんだけど、今のこの有り様はどうかしら。
自分から楽しみを取りに行かず、全自動で提供される次の旅行を、ぽかんと何もせずに待っている。

これが怠惰でなくてなんだろう。